自分で言うのも何だけど。俺は、問題児って奴だ。
宿題なんて、かったりぃし、期限ってのも、まためんどう。だから、俺は宿題なんて、ほとんど出したことがなかった。
部活は好きなんだけど、これがまた厳しいとこなんだよな。特に、真田副部長からは、すぐに鉄拳が飛んでくるし。だから、余計怒られんのは、わかってっけど、それでも、たまにはサボりたくなる。
そんな俺の面倒見役が、同い年のマネージャー、だった。
しかも、は1年のときは同じクラスでもあったし、クラスでも面倒見役をさせられてた。

最初は、それもうっとうしかった。でも、はムリに勉強しろとは言わなくて。俺の意見もちゃんと聞いて、「じゃあ、今日はこれだけしてみよっか」と俺のペースに合わせてくれた。そして、俺が宿題を終わらせると、すごく喜んでくれた。
俺は、その笑顔見たさに、かなりマシになっていった。

それなのに。

2年になって、俺たちはクラスが別々になっちまった。
このクラスにも、面倒見役をさせられそうなタイプの女子がいた。でも、ソイツの言うことを聞く気にはならねぇ。別にソイツのことが嫌いだとか、そんな気持ちはない。ただ、じゃなきゃイヤなんだ。
それに、が今、同じクラスの別の奴を世話してるんじゃないかって思ったら、余計に真面目になんてやってられねぇ。

おい・・・。これって・・・。のこと・・・。好き・・・なんだよな?
うん、絶対そうだよな。

そう自覚すると、余計に俺のイライラは直らなくなった。
今、は俺じゃなく、誰の面倒を見てるんだ?
今、は俺じゃなく、誰としゃべってるんだ?
そんなことまで気になり始めた俺。・・・ヤバイ。本当、ハマりすぎ。

唯一の救いは、部活じゃ、まだは俺の面倒を見てくれてるってこと。
でも、救いが1つしかないなんて、全く無いに等しい。
だから、結局、俺の機嫌は直らず、俺の成績がどんどん下がっていった。


「赤也。また、成績下がってるらしいね。私、違うクラスなのに、どうにかしてくれって言われたよ?」


部活が終わって、帰ろうとしたときに、が冗談っぽく、そう言ってきた。


「じゃあ、が教えてくれりゃあ、いいじゃん。」

「いいよ。でも、いつ勉強する?」

「休み時間とか。」

「わかった。じゃ、私が赤也の教室に行くね。」


あれ・・・?なんか、あっさり解決した。

それから、は本当に毎時間、俺の教室に来てくれた。ついでに、昼も一緒に食べたり。んでもって、宿題が出た日なんかは、部活が終わってからも、教えてもらった。真田副部長も、勉強するなら、って部室の鍵は、に預けてくれた。・・・まぁ、がいるなら本当に勉強するだろう、ってことなんだろうけど。
とりあえず、久しぶりに、一緒にいられる時間が増えて、俺もすげぇ嬉しかった。・・・でも、それも初めの内だけ。どっちかのクラスの次の授業が移動教室だったりすると、一緒にいられないわけで。


「――って解き方だと、結構簡単に答えが出せるでしょ?・・・・・・って、赤也。聞いてた?」

「あー・・・、悪ぃ。」

「ちょっと休憩しよっか。」

「ん〜。」


今、俺たちは部活後の勉強時間だ。今日も、なんか宿題が出たから、に教えてもらってるとこ。
でも、俺はなかなか一緒にいられないっていう不満ばっかを考えてて、全然集中してなかった。せっかく、が教えてくれてんのに。・・・ごめんな?
は、俺が疲れて集中力が切れたと思ったらしく、休憩しようと言ってくれた。・・・まぁ、との時間を勉強だけで過ごすのも損だし。俺は、疲れたっぽい声で返事した。


「何か買って来ようか?」

「いらねぇー。」

「そっか。私の分を買って来ようかなと思ったんだけど。」

「ダメ。」

「え?」

「ここにいろよ。」

「・・・うん、わかった。」


少し立ち上がりかけていたのに、は俺を心配して、また座ってくれた。


「・・・何かあった?」


今、の目には俺しか映ってなくて。俺のことだけを考えてくれていて。
こんな時間がずっと続けばいい。
もし、できるのなら、俺しか開けることのできない部屋にでも閉じ込めていたいぐらいだ。
・・・今のは、ヤバイか?でも、それぐらい誰にもを渡したくない。


「今のクラスには、俺みたいな奴いねぇの?」

「うん、いないよ。」


そんな答えを聞いても、俺の不満は消えなくて。


「いたとしても、俺以外の奴の面倒なんて見るなよ。」

「赤也・・・?」


俺の気持ちは抑えられなくなって。


「俺、のことが好きだ。」

「・・・どうしたの、赤也。」


抑えきれなくなった、この気持ち。全部、にぶつけて。全部、に受け取ってほしい。


のことが好きだから、付き合いたいって言ってんの。」


なぜか怒り気味に言ってしまった俺。しかも、すっげぇエラそうだし・・・。
こんなんで、俺の気持ちは伝わんのかな、なんて、自業自得なのに、今更心配になる。
そもそも、伝わったとしても、に拒否られたら、俺はどうするんだ・・・?
拒否られたら、俺は・・・。俺はを・・・どうにかしてしまうかもしれない。


「・・・私でいいの?」

「その反応って・・・。もしかして・・・!!」


ガタッと、椅子から立ち上がった俺に、は恥ずかしそうにしながらも、小さく頷いてくれた。


「うん。私で良ければ喜んで。」

「ホントに?!」

「私だって、好きでもないのに、部活終わってから赤也の勉強に付き合おうなんて思わないよ。休み時間だって、勉強なんて理由つけて、本当はただ赤也に会いたかっ・・・・・・。」


もう、それだけで充分で。って言うか、もう「休み時間――。」の辺りで、俺はの方に向かって歩き出してた。そんで、まだ恥ずかしそうに下を見てて、俺が近付いたことに気付いてないを俺は思い切り、抱きしめた。


「あ、赤也・・・!」

「いいだろ?俺だって、のこと好きで、すげぇ嬉しいんだから。」

「・・・・・・。」


は、また小さく頷いてて。もう、あまりのカワイさに、俺の力はまた強くなった。
俺の腕の中にがいる。もそれをイヤがってないし。
やっと満たされた、そんな感じだった。
俺は、自分の顔をの頭の上に置いて、やっと得られた満足を感じていた。
なのに。


「・・・・・・赤也。その・・・。そろそろ、勉強再開しない?」

「ヤダ。」

「・・・あのねっ、赤也。本当、私だって、すごく嬉しいし、今の状況だって、すごく幸せなんだけど・・・。それと同時に、すごく恥ずかしいから、一旦離れない・・・?」

「・・・・・・。」

「お願い。」

「・・・わかった。」

「ありがとう。」


に、そこまでお願いされちゃあ仕方がない。カワイくて、断れないし。
でも、離れてみると。
相変わらずの顔は赤いし、なんか、目がうるうるしてる(涙目?)っぽいし。しかも、座ってるは、立ってる俺に上目づかいになるわけで。


「赤也・・・?!」


俺は、また、すぐにを抱きしめてしまった。
・・・だって、あの顔は反則だろ。絶対、フツーの男なら、100%俺と同じことをすると思う!むしろ、手を出してないだけ、俺ってマシじゃね?(←抱きしめんのは、手を出してるには入んないってことで!)


「一旦、離れたじゃん。」

「短すぎるってば・・・!」


そうやって焦るもカワイイし、俺だって、いつまでもこうしてたいぐらいだけど。これからは、いつでも、こんな風にできるんだと思ったら、今日はこの辺で勘弁しといてやるか。なんて思って、から離れた。


「冗談だって。」

「もう・・・。勉強、するよ・・・!」

「りょーかいっ。」


まだ顔の赤いはやっぱりカワイイし、を誰にも渡したくないっていう俺の気持ちも変わんないけど。でも、好きだからこそ大事にしたいという思いもある。だから・・・、今はの言うこと聞いて、勉強してやるよ。
それに、俺がちゃんと宿題を終わらせたら、またはいつもの笑顔を見せてくれんだろ?俺は、やっぱり、笑ってるが1番好きだから。だから、イヤな勉強だって頑張ってみせる。
そういうわけだから、も、俺のために笑ってくれよ?そしたら、俺は、もっと頑張るからさ。









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初書き切原夢です!そして、立海の中で、初めて夢を書き始めたキャラでもあります。
立海はいずれ書きたいと思っていたんですが、まさか赤也くんから書き始めるとは、自分でも予想外です(笑)。でも、この調子で、立海メンバーも増やしていければいいなぁと考えています。

今回の作品は、タイトルそのままなんですが、T.M.Revolutionの「独裁 -monopolize-」という歌を聴いて、かなり束縛する感じの話を書いてみようと思ったのがきっかけです。
まぁ、この曲自体は束縛したいけど、できないっていう感じの歌詞なんですけど、思いっきり極端な話を書こうかな、と。それで、そういう極端なことをしちゃいそうなのは、感情が激しい赤也くんかな、と。
でも、あまりに極端な話にすると、危ない方へ行ってしまうので、オチが難しかったです(笑)。なので、完成したのは結構遅かったですね。

('08/02/08)